続きまして第43回目は、
gunnii以上に日本の環境に合っており、
在来の植物のように育てることのできる
ユーカリ・クレヌラータです。
◎ユーカリ・クレヌラータ
【学名:Eucalyptus crenulata】
【英名:Victorian Silver Gum / Buxton Gum / Silver Gum】
このcrenulataは見た目もとても美しく、
この日本のあらゆる環境に置いても
トップクラスに育てやすいユーカリです。
育てやすいだけで、見た目がイマイチというのでは何ですが、
その外観も新葉の白銀色と下葉の鮮やかな深緑色のコントラストが
とても美しく、魅力もたっぷりのユーカリです。
まず下の写真は春の新芽の写真です。
白銀色がとても美しく、
cinereaなどに匹敵するほどの白さです。
そして下の写真が深緑の生える
少し古い葉になります。
新芽付近が白銀色に輝きながら、
全体的には深緑の生える青々とした感じが
とても美しい外観を演出してくれます。
crenulataは、現地オーストラリアでは
比較的冷涼地の湿地帯出身のユーカリです。
冷涼地のユーカリには、
とても暑さに弱い品種が多いのですが、
crenulataは暑さに強いというわけではなくても、
大阪の暑さでも、高温障害などの
ダメージを受けるようなことはほとんどありません。
とても強健で育てやすいcrenulataですが、
何故か、絶滅危惧種に指定されています。
それでも、タネなどは非常に多く出回っており、
園芸用には非常に重宝されています。
他の絶滅危惧種のユーカリもそうですが、
どうやら、オーストラリアでは近年雨量が減少しているようで、
水の大好きなユーカリに絶滅危惧種が多いように思います。
このcrenulataの大きな特徴として、
葉の縁が激しくギザギザになっているところがあります。
crenulataという学名も
その葉の縁のギザギザの形状から名づけられました。
試しにcrenulateという英語の意味を調べてみると
「小さい丸い歯のついた端がある」という意味で、
まさにこのcrenulataの特徴そのままですね。
またその茎は非常に激しくザラザラしており、
新芽同様に純白でとても美しいです。
より激しい日光に当てて育てると、
緑になった葉に光沢が出てくることもあります。
すると、その葉の緑がさらに鮮やかに映えます。
鮮やかな緑色の葉と新葉の白銀色の演出は
個人的には少しクリスマス的な雰囲気がすると思っています。
crenulataには少し個体差があり、
葉先がピンと尖って際立った三角の葉をしているものと、
比較的葉先が丸いものが存在します。
多くの場合は葉先の尖った個体が生じます。
これが少し珍しい葉先の丸い個体です。
どちらの個体もcrenulata特有の
葉のコントラストの美しさは変わりません。
crenulataはユーカリの中ではそんなに大きい方ではなく、
12m程度の在来の一般的な樹木サイズです。
ところが現地で地植えをしている例を見てみると、
そこまで大きくなることは滅多になく、
大体数メートル程度で収まることが多いようです。
またユーカリの中でも随一の葉の茂りを誇っているため、
垣根や日陰用の樹木としてとても優れています。
大きくても12m程度がマックスで、
大概が数メートルで収まるような品種ですから、
数メートルで容易に開花が見込めるのも魅力です。
もちろん鉢植えでコンパクトに育てるのにも向いています。
また大きく育つと葉が槍のように細くなる多くのユーカリとは異なり、
終始この美しい葉をキープし続けるのも大きな魅力です。
その実の形状はとても変わっており、
ガムナッツとして花材にも使えるようです。
また、その実の形状からもわかるように
とてもたくさんの花を付けます。
crenulataの成長力はgunnii並みで
比較的、成長は激しい方です。
ただし、樹高を伸ばすよりも、
脇芽を大量に出して、葉を増やす力が強いので、
育てていくにあたって、さほど厄介でもありません。
大型樹木が多い、ユーカリの鉢植え栽培では、
越冬後などに下葉がなくなってしまい、
どうしても樹形を綺麗に保つのが難しいところですが、
crenulataは簡単に美しい樹形を造ることができます。
下の写真は我が家の自慢のcrenulataですが、
これはあまりテクニカルな剪定など行っていません。
(というかそんなテクニカルな剪定はできません><:)
それでもこのように、
勝手に美しい樹形に茂っていってくれるのです。
crenulataの管理方法としては、
gunnii以上に気を使うことがなく、
通常の観葉植物と全く同じような管理で大丈夫です。
水を遣りすぎて、枯らせてしまうようなことは、
よほど用土の排水性が劣悪でない限り、
起こることはないでしょう。
逆に、水切れにはgunnii以上に弱いので、
寧ろ水切れで枯らせてしまう方が心配になってきます。
とはいえ、水ビタビタな環境がベストというわけではないので、
一般的な観葉植物並みの乾燥具合で育ててください。
たまに、うどんこ病やハダニなどの被害を
激しく受けることもありますが、
成長力が旺盛なのと、病害虫が下火になる、
かなり涼しい季節でもどんどん成長を続けていくので、
枯死するほどのダメージを受けるようなことはありません。
それ以外には特に特筆するような注意事項もありません。
このcrenulataは、過湿に対する耐性に加え、
ユーカリの中ではトップクラスの耐陰性を持っています!
耐陰性とはいっても、室内管理は難しいですが、
半日陰での管理は問題なく行えます。
家のベランダのように、風通しが悪く、
日照がイマイチな環境でも、
特に問題なく育てることができます。
この辺りが、gunnii/globulusなどよりも、さらに、
より日本の環境に適応できるユーカリであるという理由です。
気になる耐寒性はユーカリ中でもトップクラスで
データでは-15℃以上と言われています。
もちろん大阪の冬など葉痛みや紅葉さえしません。
また、冬に過湿でユーカリを枯らせてしまった人にも安心!
冷涼湿潤を好む品種なので、冬季の過湿にはとても強いです。
寧ろ冬の水切れに注意しなければいけないほどです。
日本では、あまり知られていないcrenulataですが、
現地では、アロマ用精油として意外にも評価が高いのです。
シネオールなどの刺激の強い成分が少なく、
ミント系や甘みのある芳香成分が多く含まれ、
薬用よりもアロマ用として評価が高いのです。
精油の含有量はとても多いというわけではありませんが、
アロマ用や切枝としても利用できる魅力的なユーカリです。
最近は、まだまだ非常に稀ではありますが、
日本でも切枝用などで少し出回るようになってきました。
そんなcrenulataの気になる香りについては、
甘みのあるミント様の香りがします。
葉をクラッシュすると少し青臭く感じることもありますが、
指で葉をこすったり、干して使うととても爽やかな香りです。
ちなみに我が家でユーカリ酒を作ったときには
同居人からトップクラスの評価をもらっています。
ユーカリ茶はまだ試していませんが、
ぜひ一度試してみたいと思っています。
こんなにも魅力や利点たっぷりのcrenulataですが、
なぜこんなに紹介が遅れたのかというと、
どうしても日本ではマイナーなユーカリだったからです。
いくらその魅力について紹介しても、
容易に手に入れられないのでは意味がないと思っていたので、
個人的に少し寝かせていた経緯があります。
ところが、現在では、
親愛なるこあら師匠の農場の定番品種となっています。
ユーカリって難しい?など心配だったり、
ユーカリで美しい樹形を演出したい方には
gunnii以上にオススメなユーカリです。
また、ユーカリを育ててみたいけれど、
十分な環境が用意できない人にも向いています。
育てやすくて、香りも良くて、美しくて
何にでも使える、魅力たっぷりのcrenulata!
ぜひとも育ててみてください!
ユーカリ入門編にも最適ですよ♪
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<栽培難易度:A>
香良さ:★★★★
香強さ:★★★
成長力:★★★★
要水分:★★★★★
耐過湿:★★★★★
耐水切:☆
耐日陰:★★★★★
耐移植:★★★★★
耐寒性:★★★★★
耐暑性:★★
耐病虫:★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい