続きまして第48回目は、
日本では切枝用としても人気があり、
白銀の葉と茎がひときわ眩しい、
テトラゴナ・シルバーこと
ユーカリ・プレウロカルパです。
◎ユーカリ・プレウロカルパ
【学名:Eucalyptus pleurocarpa】
【英名:Tallerack / Mealy Gum / Silver Marlock / White Marlock】
とても人気のあるpleurocarpaですが
やっとこちらで紹介することができました!
とにかく、日本ではテトラゴナ名で切枝としても有名!
ユーカリの中でも、ずば抜けた美しさを持っています。
このユーカリ、元々はEucalyptus tetragonaという学名でした。
ところが、近年、大きな違いを持った亜種が見つかったため、
Eucalyptus pleurocarpaという学名に分割されています。
その大きな違いを持った亜種は、後日紹介しますが、
先日開花をした、Eucalyptus extricaです。
新しい学名が付けられた今日でも
tetragonaという名称は未だに根強く残っており、
白みの強いpleurocarpaはテトラゴナ・シルバーとも呼ばれます。
また一方、緑色の強いextricaについては、
テトラゴナ・グリーンと呼ばれています。
基本的には、このシルバーのpleurocarpaの方が主流で、
日本で見かけるテトラゴナの切枝は、
ほぼ間違いなく、このpleurocarpaのものです。
pleurocarpaの何よりもの魅力は、
切枝でも評価されているその純白の葉と茎です。
葉も茎も非常に強く粉を吹いています。
またその新芽はとても美しく純白そのものです。
実は、このpleurocarpa、
発芽してからしばらくの間は、
緑色の葉をしており、たくさん毛が生えています。
上の写真の株とその他の写真の株は
全く同じ株になります。
最初育て始めたときには、
別のユーカリ?とさえ思ってしまいます。
そのまま成長していき、50cmを超えるくらいから、
急に全ての毛が抜けていき、毛のない葉が生え出します。
葉や茎の白銀色もそのあたりから強くなり出します。
そして、どんどん成長していくに従って、
葉や茎の白みはどんどん増していきます。
最終的に立派な木になった株は
下の写真のような美しい純白の外観になります。
他にも我が家で大きく育ったpleurocarpaの写真があります。
詳しくはこちらの記事の写真をご覧ください。
pleurocarpaとextricaの違いは
シルバー/グリーンの通りまずその色です。
確かにpleurocarpaの方が葉色が白くなり、
extricaの方が葉色が緑がかる傾向にあります。
ところが実際は、葉色にはあまり差がなく、
個体差で十分に入れ替わってしまいます。
ところが茎の色にだけははっきりとした違いがあります。
シルバー/グリーンという違いは、葉色ではなく、
その茎の色の違いから来ているようです。
また、茎の形状はウイング型という尖った四角形をしています。
茎の断面が忍者の手裏剣のような形になります。
これがextricaですとそこまで激しいウイング型ではなく、
通常の四角形に近くなる傾向が強いです。
他には、pleurocarpaの方が葉が丸みを帯びており、
比較的真っ直ぐに上に伸びる性質が強いです。
一方のextricaは、葉先が尖り、葉が長細くなり、
脇芽をたくさん出して、横に広がる性質が強いです。
それでも、葉の形状や樹形、茎の色だけでは、
なかなか素人目には見分けがつかないこともあります。
亜種として分けられる要因にもなった決定的な違いは、
その蕾・実の形状と色です。
実の形状は角があり、四角形をしています。
実はpleurocarpaという学名も
その実の形状から名づけられました。
pleuroはribという意味でうねや盛り上がりという意味です。
carpaは実ですから、角のある実という意味ですね。
また、その実が白く粉を吹いていることも特徴です。
後日また詳しく紹介しますが、extricaでは、
実に角がなく、ほとんど粉を吹いていません。
この実こそが決定的な識別のポイントですが、
何株もpleurocarpaとextricaを育てていると、
最終的には、パッと見でわかるようになります。
pleurocarpaは現地ではその学名よりも
Tallerackというアボリジニ名で親しまれています。
その生息地は、オーストラリア南西部の沿岸地域、
エスペランス東のオーストラリアでも有名な
美しい海岸が広がっている地域です。
この辺りは、たくさんの珍しいユーカリが生息する地域で、
沿岸部出身なので、どれも耐塩性がかなり強いようです。
そのため、pleurocarpaは、海の傍であっても、
容易に栽培することが可能なようです。
pleurocarpaは低木のMallee(灌木型)です。
上に伸びれば、最高5mくらいにはなるようですが、
大体は横に広がって、2~3mくらいのブッシュ状になるようです。
そのため、サイズ的には鉢植えでも管理しやすく、
何よりも数十センチの樹高で開花が見込めます。
下の写真は我が家のベランダの
pleurocarpaの開花写真です!
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我が家のベランダでpleurocarpaが開花!
※更に詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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こんな魅力満点のpleurocarpaですが、
栽培に関しては少し我儘なところがあります。
まず、他の西AZのユーカリの例にもれず、
直射日光に良く当てて、乾燥力の強い用土で、
乾燥気味に育てることが大切です。
水分管理にはかなりうるさいようで、
好む環境が作れていないと、
全くと言っていいほど成長してくれません。
私は当初、水分管理がうまくできずに、
一年で5cmしか成長しなかったことがあります。
あまりにも成長が緩慢だったので、
マイペースというあだ名を付けていたほどです。
ところが、ひとたび好む環境を構築できれば、
成長力はalbidaなどよりも遥かに激しくなります。
またひとたび成長力に火がつくと、
夏季の吸水量は半端なくなります。
夏季限定でgunniiなどの吸水量は顔負けになります。
また、激しく粉を吹いているので、
macrocarpaなどと同様に、激しい西日を浴びても
全く葉焼けするようなこともありません。
とにかく、乾燥力の強い用土で、
終日直射日光に当てることが、栽培のポイントです。
真夏は成長が控え目になる植物が多い中、
pleurocarpaは真夏でも激しく成長します。
注意するところは、先述した激しい吸水量です。
水が切れると、結構早い段階で葉先に枯れが出ます。
吸水量が激しく、水切れにも弱いくせに、
水分管理にうるさく、過湿を嫌うというのが、
このpleurocarpa栽培の最も難しいポイントです。
このpleurocarpaを上手く育てるポイントとしては、
育苗初期には少し小さめの鉢で育て、
成長力に火が付いたら、一気に大きな鉢に植え替えるというのが
個人的には良いように思っています。
何はともあれ、早く乾く土で頻繁に乾いて水を与えるという、
栽培では最も手のかかるサイクルを好むユーカリの代表格です。
また、もう一つの成長のポイントとしては、高い気温のようです。
親愛なるこあら師匠の農場でも、
夏季に40℃を超えるようなビニルハウス内で
ひと際元気に育っていると伺っています。
他のユーカリと比べると少し我儘なpleurocarpaですが、
私は西AZのユーカリの入門編に最適だと思っています。
病虫害にも比較的強く、
育て方がハッキリしていてわかりやすく、
西AZのユーカリの特徴を掴むのに最適だからです。
また、育苗難易度も立ち枯れしにくく、
西AZのユーカリの中では簡単な部類になります。
このpleurocarpaを上手く育てることができるなら、
他の西AZのユーカリも問題なく育てることができますし、
このpleurocarpaの育て方をベースにするととても良いです。
気になるpleurocarpaの耐寒性ですが、
実はこの耐寒性がpleurocarpaのネックになります。
そこそこの樹高にまで育ち、
毛がなくなり、硬い葉に育ったpleurocarpaは
-5℃程度までは問題なく耐えられます。
ところが毛の生えている間の小さな株は
0℃以上で管理することが推奨となります。
また霜にもとても弱く、激しく葉痛みを起こします。
60cmを超えるような株であれば、
関西や関東の暖地では容易に野外越冬が可能ですが、
小さな間は無加温の簡易温室内で越冬する方が無難です。
無加温であっても、簡易温室内で寒風を防げるならば、
-5℃の環境で、発芽したての苗の越冬実績があります。
この耐寒性の弱さは、pleurocarpaの生息地が
ほとんど0℃を下回ることのない地域であることに起因しています。
pleurocarpaは現地オーストラリアでも栽培用として人気があります。
ところが多くの地域ではpleurocarpaの生息地よりも寒くなるので、
激しい葉痛みが起こりますが、現地の栽培者も親愛なるこあら師匠も、
冬にはある程度は傷むものだと割り切って育てているようです。
pleurocarpaはとにかく、あまり寒さには強くないユーカリなので、
どうしても葉痛みを避けたい場合には、
寒い夜には簡易温室内に退避すると良いでしょう。
一つ注意するポイントですが、
冬になれば、確かに吸水量は激減しますが、
毛の生えているユーカリは、余り寒い冬を知らないためか、
冬になっても、他のユーカリと比べると水を欲する傾向があります。
とはいえ、1週間に一回程度のペースですが、
安心していると水切れを起こすので少し注意してください。
次に気になるpleurocarpaの香りですが、
残念なことに、万人受けする良い香りとは言えません。
現地では、レモンの香りと言う人もいるようですが、
レモンと言うよりは、レモンの皮を砕いたときの生臭い香りに、
シネオールが加わったような、少し渋い香りです。
また、ユーデスモールという漢方成分も含まれているため、
少しスパイシーな薬草っぽい香りにも感じます。
香り自体は決して弱い方ではなく、
指で葉を軽く撫でると香るほどですが、
香りを楽しむユーカリとしては少しキツイかもしれません。
薬草系の香りが好きなマニアの方には
もしかすると喜ばれる香りかもしれません。
香りはともかくとして、
その美しい外観は明らかに見るものを魅了します。
また西AZのユーカリのスタンダードとしても最適で、
ユーカリファンの人にはぜひ一株育ててほしい品種です。
とはいえ、その辺に簡単に売っているような
超メジャーなユーカリではありませんが、
親愛なるこあら師匠の農場では主力商品です。
この美しいpleurocarpaを育ててみたい方には
素晴らしい農場を紹介します!
私も将来、広い庭を手に入れた暁には、
是非とも露地植えしたいと考えているユーカリです。
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<栽培難易度:C>
香良さ:★
香強さ:★★★
成長力:★★★
要水分:★★★
耐過湿:★★
耐水切:★★
耐日陰:★★
耐移植:★★★
耐寒性:★
耐暑性:★★★★★
耐病虫:★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい