第21回目はタスマニア出身のミント系ユーカリ。
お隣のニュージランドでは防風林として活用され、
街路樹や庭木としても人気のユーカリ・テヌイラミスです。
◎ユーカリ・テヌイラミス
【学名:Eucalyptus tenuiramis】
【英名:Silver Peppermint】
ユーカリの多くはシネオール系の香りを持つものが多いです。
要するに樟脳系、メンタームのような香りですね。
精油で有名なglobulusやviminalisもシネオール系の香りです。
このシネオール系とは別に
ミント系の香りを持つユーカリがあります。
精油で有名なものとしてはEucalyptus divesや
Eucalyptus radiataなどがあります。
これらの精油はペパーミントに良く似た香りを持っています。
厳密にいうとペパーミントそのものよりも、
ミント臭の石鹸や洗剤、ミントガムの香りに近いです。
このtenuiramisはミント系ユーカリの代表格です。
ミント系ユーカリには数百m級の巨木に育つ品種と、
中規模から比較的低木の品種があります。
このtenuiramisは後者に属していますが、
その中では比較的大きく育つ方で
20~25mくらいの立派な樹木へと生長します。
このtenuiramisはオーストラリア本土には生息せず、
完全にタスマニア固有の品種です。
そのため、あまり本土では知られていないようで、
本土のタネ屋では見かけることが少ないです。
逆にタスマニアのタネ屋では主力商品の一つです。
英名の通り、新芽はかなり綺麗な白銀色になります。
特に冬季に成長する新芽が抜群に美しいです。
ニュージーランドの栽培者から
銀葉の美しい品種としてrisdoniiと共に薦められました。
検索エンジン等で調べてみると、
美しい銀葉の写真がいくつか見つかります。
実際に育ててみるとこれらの写真が嘘ではないことがわかります。
美しい新葉はしばらく経つと他の葉とこすれあって、
濃い緑色の丈夫な葉に変わっていきます。
この濃い緑色の下葉と
少しピンクがかった新葉とのグラデーションが
また何ともいえない美しさを演出してくれています。
ちなみに夏場は成長がほとんど進まないので、
濃い緑色の葉ばかりになりますが、
涼しい成長期には白銀の葉が多くなってきます。
このユーカリの大きな特徴として、
perriniana(ツキヌキユーカリ)のように
葉がツキヌキ状に育っていくところがあります。
perrinianaのようなまん丸葉のツキヌキではなく、
少し細長い尖った葉のツキヌキになります。
大きく育てばよりツキヌキがよりハッキリしてきます。
タスマニアの気候はオーストラリア本土とは少し変わっています。
一日の寒暖差が大きく、四季の差があまりない本土とは異なり、
タスマニアは一日の寒暖差が穏やか、
四季の差もはっきりしており、降雨量も多めで安定しています。
この気候は比較的日本の気候に近いと言われています。
日本で育てやすいといわれているgunniiやglobulusなども
実はタスマニア固有の品種なのです。
(globulusはssp. globulusのみタスマニア生息種です。)
というわけで、このtenuiramisは、
日本では比較的育てやすいユーカリといえます。
特にミント系のユーカリ全般に言えることですが、
ハダニやうどんこ病、その他の病虫害を
ほとんど受けることがありません。
これは日本の狭い栽培環境では、
とても育てやすいポイントになります。
管理方法は日本でありふれたユーカリ、
特にgunniiと同じような管理で大丈夫です。
厳密にいうとgunniiよりは若干乾燥に耐えます。
gunnii程ではありませんが耐寒性は-9℃程度です。
大阪の冬なんてものともせずにどんどん成長していきます。
また暑い夏が大好きな多くのユーカリとは異なり、
かなり涼しい季節に良く成長する品種です。
この写真の株は初夏にタネを播いたものですが、
10~11月、特に11月に入ってからの方が良く成長しました。
逆に夏の間はほとんど動きませんでした。
比較的育てやすいtenuiramisですが、
一つ弱点があるとすると、
私の育てている大阪などでは、
夏場は少し暑すぎるというところです。
上記にあるように夏場は成長がほとんど進まないばかりか、
大阪では、かなり激しく高温障害の症状が出たり、
高温多湿で湿気が籠るような場所では、
激しく葉が枯れたり、葉痛みが起こることがあります。
夏場限定で葉が黄変して、褐斑が出るのは、
典型的な高温障害の症状です。
ただ、秋も進んでかなり涼しくなる頃には、
新芽を出して復活してきますので、
余程のことがない限り枯死することはないでしょうが、
夏場は少し涼しい場所で管理した方が良いでしょう。
また、tenuiramisは比較的水が好きなユーカリですが、
夏場は蒸れを防ぐために、
若干乾燥気味に管理した方が良いでしょう。
tenuiramisの気になる香りについては、
「洗剤ジョイのシトラスミントの香り」に良く似ています。
実際のペパーミントの香りを少し甘くしたような、
非常に爽快でアロマティックな香りです。
tenuiramisは香りも良く、
葉色も美しく、ツキヌキ状の葉も珍しい。
おまけに日本に合っていて育てやすいユーカリということで、
本当に万人にオススメしたいユーカリです。
ところが日本では全く見かけることができません。
もしかすると日本でタネを播いたのは私だけ?
なんて思ってしまうほどマニアックなユーカリなのです。
是非とも日本で広まって欲しいユーカリの一つです。
タネを購入したい場合は販売店をご紹介します。
(発芽しないタネが多く出回っているので注意が必要です!)
もしタネから育ててみたいという場合には、
発芽させるまでに少しクセがありますので、
発芽しないという場合には遠慮なくご相談ください。
もし簡単に手に入れることができるのならば、
ユーカリ好きには絶対に育ててほしいユーカリです。
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<栽培難易度:B>
香良さ:★★★★
香強さ:★★★
成長力:★★★★
要水分:★★★
耐過湿:★★★★
耐水切:★★★
耐日陰:★★★
耐移植:★★★
耐寒性:★★★★
耐暑性:★
耐病虫:★★★★★
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