記念すべき第30回目は
幼葉ではユーカリとは思えないような外観で、
美しい花を咲かせるユーカリの代表格、
ユーカリ・カエシア・マグナです。
◎ユーカリ・カエシア・マグナ
【学名:Eucalyptus caesia ssp. magna】
【英名:Silver Princess / Gungurru】
上の写真は苗木のうちのcaesia ssp. magnaの写真ですが、
今までに紹介したどのユーカリにも似ておらず、
まるで別の植物のであるかのような葉形です。
アイビーなどの蔦系やペペロミアなどの葉にも似ています。
ところがこれもれっきとしたユーカリの一種です。
葉は深い緑色の完全な逆ハート型、
かなり肉厚でツルっとしており、光沢があります。
良くうどんこ病に罹ることがありますが、
葉が肉厚でツルツルのため、
指で軽く撫でただけで、菌を簡単に取リ去ることができます。
caesiaにはssp. caesiaという原種と
このssp. magnaという亜種の2種が存在します。
ssp.caesiaの方が花や実、樹高など全てが小ぶりで、
ssp. magnaの方が全てにおいて大型で幹の白銀色も強くなります。
magnaには大きいという意味があります。
caesia全体を一般的にSilver Princessと呼ぶこともありますが、
厳密にはSilver Princessとはssp. magnaのことです。
上の写真のような幼苗の間は
蔦系のような少し渋い葉形をしていますが、
成長してからのcaesia ssp. magnaは
Silver Princessの名に相応しい
繊細で美しい外観へと変貌を遂げます。
葉は細長い一般的なユーカリの葉形へと変わり、
茎や蕾はそれはそれは美しい白銀色になります。
caesiaという学名はラベンダーブルーという意味で、
この茎や蕾の白銀水色に由来しています。
もう一つcaesia ssp. magnaの大きな特徴をあげるとするならば、
ユーカリ中でも美しくて有名なピンク色の花でしょう。
下の写真は2015年の4月に我が家のベランダで開花した
caesia ssp. magnaの花です。
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我が家のベランダでcaesia ssp. magnaが開花!
※更に詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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その花の美しさから、現地オーストラリアでは
公園などの街路樹として好んで植えられています。
西オーストラリアでユーカリの花見といえば、
torquataやこのcaesia ssp. magnaの花見のことをいうようです。
caesia ssp. magnaという学名よりもSilver Princessや、
アボリジニーの言葉による名前Gungurruで親しまれています。
西オーストラリアでは、よく見られるcaesia ssp. magnaですが、
元々はパース北東部半砂漠地帯の
限られた地域にのみ自生する品種です。
その花や茎の美しさから園芸用として広まったと考えられます。
樹木としては15m程度までの灌木状に育ち、
比較的低い樹高の鉢植えでも開花が見込めるようです。
またcrucis/orbifolia/websterianaなどと同じく、
minnirichiという一風変わった赤い樹皮が特徴です。
花・茎・樹皮と面白い特徴が
盛りだくさんのcaesia ssp. magna。
将来、広い庭の家に住むようになったら、
ぜひ、庭木にしたいと考えています。
このcaesia ssp. magnaは、少しの過湿耐性があり、
西オーストラリア軍団の中では比較的育てやすい品種です。
西オーストラリアのユーカリ入門編といえるでしょう。
また、幼苗のうちは大したことはありませんが、
ある程度の大きさに成長した株の吸水量は半端ありません。
日照がとても良い場所での夏季の吸水量は
gunniiなどとは比べ物にならないほどに激しいです。
また、あまり水切れに対する耐性がないようで、
水切れするとかなり早い段階で葉先や新芽が枯れ出します。
実家の庭では、全てのcaesia ssp. magnaが
水切れで全滅してしまったほどなので、
夏季の水切れには特に注意が必要な品種です。
ただし最高気温が30℃を切るようになってくると、
他の西AZのユーカリの例に漏れず
その激しい吸水量は一気に激減していきます。
冬季も断水とまでは言いませんが、
ビックリするほどに水を吸わなくなります。
それでもかなり育てやすいユーカリで、
少し聞きわけが良く、丈夫なlehmanniiといったところです。
用土の酷い過湿は避け、乾燥気味に管理し、
とにかく日光にさえ良く当てていれば、
中々のスピードで成長していきます。
春先の少し涼しい季節から、夏真っ盛りの暑い季節まで、
コンスタントに成長を続けてくれる品種です。
耐寒性についてはあまり強い方とは言えません。
最高で-7℃程度までは生き残れるようですが、
大阪の冬でもある程度の葉痛みが起こることがあります。
樹高の小さな間や葉痛みを特に避けたい場合には、
軒下などの少し暖かい場所で越冬させると良いです。
寒い季節には新芽や葉先がワインレッドに紅葉して綺麗です。
気になるcaesia ssp. magnaの香りですが、
torquataの芳香成分トルクアトンがメインとなるため、
香水のようなフローラルな香りが微かに漂います。
ただしその香り自体はtorquataよりも遥かに弱く、
指で葉を擦った程度ではほとんど香りはしません。
葉をクラッシュしてようやく香りを感じることができる程度です。
香りを楽しむユーカリとしての利用は難しく、
花や美しい外観を楽しむためのユーカリといえるでしょう。
人づてに聞いた話ではありますが、
このcaesia ssp. magnaは
以前NHKの某園芸番組で紹介されたことがあるようです。
その際にはタネをフライパンで炒ってから播き、
山火事を経験させて発芽させると紹介されていたようですが、
そんなことをしなくても簡単に発芽します。
実際、このcaesia ssp. magnaは
私の経験では最高の発芽率を誇っています。
caesia ssp. magnaのタネはユーカリの中では比較的大きい方で、
一粒一粒を選り分けて播くことができます。
私は過去に9粒のタネを播いたことがありますが、
その全てが元気な苗として発芽しました。
要するに発芽率100%だったわけです!
ちなみに他の品種ではこんなことは滅多にありません。
かなりの有名番組で紹介されたために、
当時はかなり多くの人がタネを購入して育てていたようですが、
なかなか難しく、ほとんどの人が枯らせてしまったようです。
これを聞くと難しいユーカリ?と思われるかもしれませんが、
西オーストラリア出身で乾燥を好むことさえ踏まえていれば、
西オーストラリアのユーカリ入門編で間違いありません。
ただ、いくら育てやすいとはいっても、
日本の一般的な草木と同じ水分管理では、
さすがに育てるのは無理だったのだろうと思います。
caesia ssp. magnaは苗木のうちは
少し特異な外観をしていますが、
大きさ的にもパフォーマンス的にも
庭木として最高のユーカリではないでしょうか。
花を咲かせて楽しんだり、
花材として利用できる美しいユーカリです。
また、gunniiなどの日本に合ったユーカリを
ひとしきり育てた方の次のステップにもおすすめです。
是非、一度育ててみて花を咲かせてみてください。
手に入れたい方には素晴らしい農場をご紹介できますので、
是非声をかけてくださいね。
ちなみにユーカリをタネから育てる場合でも、
caesia ssp. magnaは入門編としておすすめですよ♪
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<栽培難易度:C>
香良さ:★★★
香強さ:★
成長力:★★★
要水分:★★★★
耐過湿:★★★
耐水切:★★
耐日陰:★★
耐移植:★★★
耐寒性:★★
耐暑性:★★★
耐病虫:★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい
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