続きまして第45回目は、
東オーストラリアの宝石!といえるほどに
白銀小丸葉が超美しく、
香りも非常に魅力的で素晴らしい
ユーカリ・グラウスセンスです。
◎ユーカリ・グラウスセンス
【学名:Eucalyptus glaucescens】
【英名:Tingiringi Gum】
このglaucescensは
私の記念すべきタネ播き第一号です!
glaucescensを手に入れたいなと思って、
探してみたのですが、日本では全く見つからず、
仕方なく、自分でタネを播くことにしたのです。
最初はcinereaに似た感じかなと思っていたのですが、
育てていくと、cinereaとは
随分違うユーカリだと気づきました。
見ていただくと分かりますが、
眩しいばかりに美しい銀葉が一番の魅力です。
そして、葉は丸くなることもありますが、
可愛らしくハート型にも育っています。
大ぶりなcinereaに比べると
少し小さめの葉に育ち、
同じ白銀色でも少し系統が違います。
cinereaよりもより精密に
粉を吹いているといった感じです。
また、その葉だけでなく、
茎も粉を吹いており、とても美しいです。
タネ播き第一号で既に2年以上経過しているのに、
glaucescensのサイズはこんなに控え目です。
glaucescensは、特に初期の根張りが完了するまでの間、
とっても成長速度が遅いです。
最初あまりにも成長が進まないので、
海外の栽培者に確認をしたことがあります。
その結果、glaucescensは、
決して成長速度の遅い品種ではないという回答が得られました。
この回答に当初は半信半疑でしたが、
しっかりと根張りが進んでからは、
他の東AZのユーカリに負けないくらい成長が激しくなっています。
glaucescensはその英名の元にもなっている
ティンギリンギ山という超ローカルな山に自生しています。
このティンギリンギ山のある地方は
オーストラリアでも、とても冷涼な地域です。
その冷涼な地域のさらに高山生息種になるので、
実は暑い環境があまり得意ではないのです。
大阪では気温が高温多湿すぎて、栽培環境が合っていないため、
総合的に成長速度がとても遅くなっているのだと思われます。
恐らく、長野県や東北地方、北海道などで育てると、
本来の成長力を見せてくれるものと思います。
日本では少し控え目なglaucescensですが、
実は50m以上と、なかなか立派な樹木へと育つようです。
glaucescensにはTree型(木立型)になる種と
Mallee型(灌木型)になる種が存在するようです。
売られているタネのほとんどは
前者のTree型の方で、Mallee型の方は
突然変異種的な存在です。
Mallee型の方も、Malleeとはいえ、
樹高はなかなかの大きさになるようです。
glaucescensの管理方法についてですが、
西AZのユーカリしかり、環境の合っていない品種というのは
どうしても栽培難易度が高くなってしまいます。
glaucescens管理の山場は夏になってきます。
実は今まで複数回glaucescensのタネを播きましたが、
何度か夏季に全滅させてしまったことがあります。
glaucescensは暑さ、特に高温多湿に弱いので、
夏場の水遣りのタイミングが生死を分けます。
快晴38℃といったような真夏の日中に
たっぷり水遣りをしたりすると、
夕方には全滅している可能性があります。
夏場は涼しい間の水遣りを心がけます。
また、あまりにも暑い場合は
少し涼しい場所や半日陰で管理しても良いかもしれません。
かといっても、かなり日光が好きで、
十分な日光がないとちゃんと育たないので
この当たりのバランスがとても難しいところです。
東オーストラリアのユーカリの中では
なかなかの水食いであると言えます。
ところが根を張りきるまでは乾燥を好みます。
この根を張りきる前と張りきった後の吸水量の差は、
かなりのものがありますので、
当初は乾燥を好むユーカリと思わされますが、
その後の暑い季節の急な水切れには注意が必要です。
しっかりと根を張りきった株であれば、
cinereaなどよりも遥かに水を吸います。
夏の根蒸れを防ぐもう一つの方法ですが、
用土は西AZのユーカリ並みに乾燥力を上げることです。
そうすることで、余分な水分による根蒸れや
高温多湿による急性根腐れを防止することができます。
あまり、病害虫の影響を酷く受ける方ではありませんが、
この美しい銀葉は柔らかく、とてもデリケートです。
この美しい銀葉を保つのは、なかなか難しいのです。。。
実は私も、毎年、春に美しい葉が出てきて、
梅雨~秋で汚くなって、冬を越して、
また春に美しい葉が出てきての繰り返しです。
変に水が溜ったりすると葉がシミになります。
また、少しでも薬がかかると、すぐに斑点になります。
斑点やシミができた葉はすぐに散ってしまいます。
うどんこ病にかかった場合でも、
私はほとんどglaucescensには薬を使いません。
薬で病気を撃退できたとしても、
薬害で葉が傷み、結局散ってしまうからです。
脇芽をたくさん出す性質を
持っていることだけが唯一の救いといえます。
こんなに夏が難しいglaucescensですが、
冬は打って変って、とても楽で安心できます。
glaucescensの耐寒性は
-15℃以上で、-20℃以上でも生存実績があります。
恐らく、ユーカリ中で三本の指に入るくらいの耐寒性を誇っています。
冬は寒風の吹き荒れる中に放置しようが、
用土がガチガチに凍結しようが、
少し葉が傷むことはあっても、全くものともしません。
わずか数センチの幼苗であっても、
用土凍結でダメージを受けることさえありません。
もちろん、霜や雪も全然大丈夫です。
glaucescensの最終的な耐寒性は、
gunniiと良い勝負をするでしょうが、
小さな間の耐寒性はgunniiよりも
圧倒的に強いと思っています。
また、冬は少しくらいの過湿はものともしないので、
冬に過湿でユーカリを枯らせてしまった人にも安心です。
大阪で夏が難しく、冬が楽ということは、
冷涼な地域で育てれば、
決して難しいユーカリではないのでしょう。
耐寒性-12℃のcinereaが
冬を耐えられないヨーロッパや北米の寒地では、
glaucescensは、日本の銀丸葉ユーカリのように
とてもメジャーで、gunnii/perrinianaとともに
非常に良く育てられています。
日本ではあまり知名度のないglaucescensですが、
海外ではとってもメジャーなユーカリなのです。
とても魅力的な外観に次いで
glaucescensの大きな魅力となっているのが、
とっても心地よいglaucescensの香りです。
一般的に良い香りといえば
staigerianaのハニーレモンや、
nitensのフルーツの香りなどが挙げられるでしょうが、
個人的にはこのglaucescensの香りは
私の一番好きな香りです!
あまり文章では上手く表現できないのですが、
簡単に言えば、青リンゴガムの香りでしょうか。
globulusの香りと似ているところもあります。
globulusからきついシネオールの香りを控えめにして、
爽快な柑橘系の香りを強めて、甘みを足したような感じです。
glaucescensの芳香成分は
globulus特有の芳香成分であるグロブロールと、
リンゴやカスミソウの芳香成分である
イソ吉草酸エチルという物質がメインです。
とにかく、表面的だけではなく、
脳髄に染みわたる程に良い香りです。
恐らく、この香りを香った人は
誰しもがこの香りを好きになると思います。
glaucescensは精油含有量も多めなので、
少し葉を指でこすっただけでも良く香ります。
ただこすった葉は傷んで散ってしまうので、
その当たりは十分に気をつけてください。
とてもデリケートですが、
ビックリするほどに美しいglaucescens。
今まで日本では、
ほとんど手に入れる方法はありませんでしたが、
この度、なんと!!!
親愛なるこあら師匠の農場で、
栽培がスタートしたとの情報が入っています!!!
この素晴らしいユーカリを
簡単に手に入れることができるようになるのは
とても嬉しいことです!
タネから育てる場合も、発芽に癖はありますが、
芽の大きさがユーカリではかなり大きい方で管理しやすく、
育苗難易度は簡単で、入門編としても最適です。
日本とは少し環境が合っていないのが玉にきずですが、
ユーカリファンにはぜひとも育てていただきたいユーカリです。
とにかく、その素晴らしい銀葉と香りを
一度皆さんに堪能してほしいと思っています。
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<栽培難易度:B+>
香良さ:★★★★★
香強さ:★★★★
成長力:★★★
要水分:★★★★
耐過湿:★★★★
耐水切:★★★
耐日陰:★★
耐移植:★★★★
耐寒性:★★★★★
耐暑性:★★
耐病虫:★★★
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※A簡単~E難しい / A+...Aより少し難しい