続きまして第07回目は
ツキヌキユーカリ(perriniana)です。
◎ツキヌキユーカリ
【学名:Eucalyptus perriniana】
【英名:Spinning Gum】
【品種情報】
・Mainland Form(オーストラリア本土型)
最高樹高:5~7m前後
樹形:Tree(木立)型、稀にMallee(灌木)型
親葉への変化:ツキヌキ状の丸葉~柳型の細葉へ変化
適合pH:弱酸性(5.5-6.5)
・Tasmanian Form(タスマニア型)
最高樹高:4.5~6m前後
樹形:Mallee(灌木)型、稀にTree(木立)型
親葉への変化:ツキヌキ状の丸葉~柳型の細葉へ変化
適合pH:弱酸性(5.5-6.5)
【生息地情報】
・Mainland Form(オーストラリア本土型)
地域:New South Wale南東州境部、Victoria北東州境部(純高山地帯)
夏季最高気温:最高値30℃、平均値18℃
夏季最低気温:最低値-6℃、平均値5℃
冬季最高気温:最高値9℃、平均値2℃
冬季最低気温:最低値-23℃、平均値-7℃
年間降水量:750~1850mm
(参考)東京-約1800mm、大阪-約1500mm
・Tasmanian Form(タスマニア型)
地域:Tasmania南東部(準高山地帯)
夏季最高気温:最高値32℃、平均値19℃
夏季最低気温:最低値-4℃、平均値5℃
冬季最高気温:最高値12℃、平均値6℃
冬季最低気温:最低値-12℃、平均値-2℃
年間降水量:850~1200mm
(参考)東京-約1800mm、大阪-約1500mm
【一般栽培情報】
・日照
終日直射日光が推奨。
半日直射程度ではかなりパフォーマンスが落ちます。
日照が悪いと葉が薄く小さくヨレヨレで貧弱になります。
そのような葉は酷い病虫害に悩まされます。
屋内管理は完全不可。
・水遣り
表面が乾いたらたっぷりというタイミングでは、
夏以外の季節は少し多すぎます。(用土による)
他の植物に比べると、遥かに乾燥を好みますが、
ユーカリに慣れている人にはかなり水好きな方です。
・用土
日照と風通しが良ければ、通常の観葉植物用土でも栽培可ですが、
パーライトや軽石、川砂などを混ぜ込んだ方がより良いです。
粒状培養土など乾燥力のあるものの方が育てやすいです。
・鉢
あまり問いませんが、根張りがデリケートなので、
横広の鉢だと、パフォーマンスが非常に低下します。
できる限り、縦長の鉢を使用しましょう。
・肥料
あまり効き目はないですが、成長期などの液肥や、
リン酸分の少ない化成の置肥などは多少は効果あり。
全く与えなくても、十分に育てることは可能。
・植え替え
植え替えに対しての耐性は弱くはありませんが、
初心者はできる限り根鉢を崩さない方が無難です。
また、真夏・真冬の植え替えは傷みやすいので避けます。
・寄せ植え
後々の植え分けがとても困難になるため、
できる限り寄せ植えは避けた方が無難です。
・病虫害
日照不足や生育不良により、
うどんこ病の被害が激しく出ることがあります。
雨のかからない場所では、ハダニ被害の激しい品種です。
ユーカリ中でもハダニの被害が深刻な品種の一つです。
風通しの良い場所で、日光を良く浴びた丈夫な株には
病気やハダニによる被害はあまり出ることがなくなります。
精油のシネオールが強いのでその他虫害はほとんどありません。
・地植え
地植えをした方が明らかにパフォーマンスは上がります。
比較的低木品種なのですが、地植えに関する実例がなく、
あまり詳しいことはわかっていません。
成長が激しすぎて手に余るようなことはないと思います。
・耐寒性
ユーカリ中でもトップクラスの耐寒性を誇り、
地植えの成樹で-17℃以上と言われています。
関西や関東の暖地では余裕で屋外越冬可能。
日本の最も寒い場所でも栽培不可能ではありません。
寒い北米やヨーロッパでは定番のユーカリです。
寒い季節はすこぶる元気になります。
・成長力
鉢植えであれば、最高で年20~40cmほど。
地植えすると1年で80m程度まで育つ可能性もあります。
成長力は環境さえ合えば、決して遅い方ではありませんが、
成長が速すぎてびっくりするようなことはありません。
また、暑い時期はほとんど成長が進まないこともあります。
結果的に見ると、成長はかなり遅いイメージがあります。
・開花
私はまだ実現できていませんが、
恐らく150cm程度の樹高があれば、開花は十分に見込めると思います。
ただし、開花をしたという話はほとんど聞きません。
(地植えの実例もほとんどありません)
花は、ほとんど白に近いクリーム色の花が咲きます。
葉のサイズの割に思ったより小さな花です。
蕾や実はあまり強く粉を吹かないようです。
・枯死の要因
ほとんどが植え替えの失敗、過湿による根腐れ、
夏場の根の蒸れによる急性根腐れ。
管理が悪い場合は、稀に激しい病害虫の被害により、
枯死に至る可能性もあります。
【季節の管理】
・春秋
最も良く成長するメインの時期。
良く日光に当てて、成長を促しましょう。
日照が悪いと、ほとんど成長が進みません。
日照不足は即刻病気につながります。
・夏
最も枯らせることが多い時期。
冷涼な気候出身のユーカリなので、
日本の高温多湿な夏は少し苦手です。
高温障害の症状が出たことはありませんが、
湿気の多い梅雨時期などには少し葉が傷むことがあります。
また、空中湿度の高い環境で栽培すると、
葉に溜った水などが原因で葉に枯れの出ることもあります。
できる限り風通しの良い場所で管理しましょう。
その他では、水切れのサインが掴みにくいので
急な水切れによる枯れにも注意が必要です。
春の間から良く日光に当てていた株は
真夏の西日でも葉焼けすることはありません。
最も暑い時期にはほとんど成長が進まなくなります。
・冬
用土が全乾きするタイミングで水遣り。
後はひたすら放置するでOKです。
ほとんど紅葉するようなこともなく、
葉痛みもほとんどなしで、とても力強い季節です。
夏場の青々とした葉とは異なり、
特にTasmanian Formは水色~薄ピンク色のような
非常に美しい葉色の映える季節です。
この時期に過湿にしてしまうと、
春になって一気にダメージが出ることがあります。
【特記栽培情報】
まずは春と秋にふんだんに日光に当て、
丈夫で強い株と葉を育むことが第一です。
日照不足も株を貧弱にする大きな要因ですが、
他の品種よりも、風通しの良さがとても大切で、
用土だけでなく、葉にも余分な水分を残さないようにします。
※場合によっては、手で水滴を払うと良いでしょう。
日照不足は激しいうどんこ病の被害につながり、
風通しの悪さは、酷いハダニの被害につながります。
私はハダニとうどんこ病放置で枯らせたこともあります。
梅雨時期は日本の暖地では、高温多湿が過ぎるため、
ある程度の葉痛みが出ることはあります。
春と秋に、しっかりと健康な株に育てていることで、
梅雨~夏を容易に乗り切ることができます。
とても冷涼な地域に向いているユーカリです。
冬にはとても元気で葉がとても美しくなります。
元々雪原地帯にも生息しているため、
雪や霜などにもとても強く、全くものともしません。
見た目も魅力的で、極寒地で育てるには最適なユーカリです。
カナダ寄りの北米やヨーロッパ北部では
積雪も多く、あまりにも寒くなりすぎるため、
cinerea/pulverulentaといったような
代表的な丸葉ユーカリは生き残れないそうです。
そんな地域では、このperrinianaとgunniiが
最もスタンダードでありふれたユーカリになっています。
あまり大阪や関東の暖地には合っていない印象で、
東北や長野などの涼しい地域の方が向いていると思います。
ただ、その他の冷涼地のユーカリに比べると、
幾分か暑さにも耐性を備えているように思います。
※高温障害の症状があまり出ない。
このperrinianaの弱点として
剪定に弱いというところがあります。
あまり剪定に反応してくれることもなく、
切り口から菌に感染して、酷く枯れることがあります。
剪定を行う際には、鋏などを良く消毒してください。
鉄と相性が悪いという話もあるので。
木製の剪定用具を使用すると良いかもしれません。
どちらかというと灌木型のユーカリのため、
特に育苗初期は少し癖が悪く、
あまり真っ直ぐに伸びてくれなかったり、
ちゃんと自立してくれない場合が多いです。
そんな際は、通常は支柱などで矯正を行うのですが、
矯正をせずに成長するままに育てている方が、
元気に育ち、脇芽も出しやすいというデータがあります。
それでも綺麗な樹形を保つためには支柱は必要ですが、
葉がツキヌキ状のため、とても支柱が付けにくく、
葉を傷つけやすいので、気をつけてください。
過湿に対する耐性はかなりのものなので、
このユーカリを根腐れさせた経験がある場合、
ユーカリ栽培の水分管理を根本的に見直した方が良いでしょう。
※情報は適宜追加・変更します。
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